今年も恒例、昨年1年間読んだ本の中から、何冊かご紹介したいと思います。
昨年、読んだ本は、235冊。社会人としては、まずまずの冊数でした。
今年は、ノンフェクションに当たりが多く、これは一昨年の「不都合な真実」のバカ売れの影響でしょうか。
まず、1冊目は、
★「アルジャジーラとメディアの壁」石田英敬、中山智香子、西谷修、港千尋
これは社会学者が数人集まって、アルジャジーラ見学に行こうという、いい加減な動機で行ってしまい、その感想を集めた本なのですが、そこは天才、西谷修です。彼の章だけが、飛び抜けて素晴らしい。その中でも、「アルジャジーラはいかなる意味でもドメスティックではなく、ローカルであることによってグローバルな意味をもち」という言葉が忘れられません。
他にも、
★「あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実」ピエトラ・リボリ
99年のシアトル、WTOの総会に対してデモを行う女子学生を見た著者は、資本主義を攻撃するプラカードに、あなたがもう少し勉強して真実を知る力があれば、そんなことはやめるでしょうというリベラルな感想を持ちますが、実際に自分で調べて行くに従い、実は彼女が正しかったことを、著者が発見していきます。多くのグローバル企業が市場原理に従っているのではなく、市場原理を政治的に抑制・回避することを原則として発展していることを教えてくれます。
同様の本として、
★「チョコレートの真実」キャロル・オフ
80年代、アフリカの奇蹟と呼ばれ、見事な経済的成功を収めたコートジボアールが、メジャーな食料カルテルと、世界銀行、自由貿易主義の名の元に、経済を崩壊されてしまい、食料輸入国になる過程が描かれています。今の資本主義が、まるで自由競争になっていない、ちょと恐ろしい現実が描かれています。
また、アメリカ国内でも
★「ファストフードが世界を食いつくす」エリック シュローサー
読んだことのない人たちによって、マクドナルドの食べ物が危ないという本だと宣伝されてますが、巨大資本がロビー活動などにより、法律をすり抜けて、自由競争を行わず、社会を崩壊させつつあるというのが、この本の趣旨です。
さて、パラダイムシフト系のものですが、
★「時間・愛・記憶の遺伝子を求めて 生物学者シーモア・ベンザーの軌跡」ジョナサン・ワイナー
時間感覚を測るタイマー遺伝子、記憶力生み出す遺伝子、そしてsexの行動様式を決定する遺伝子などが見つかり、同じモノが人にもあることまでが証明されていきます。分子生物学が、これからの世界にどれだけ衝撃を与えるのか、ショックを受けないためにも、今のうちに読んでおくべき本です。
他に仕事関係で勉強になったなと思ったのは、
★「ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ」ドン・タプスコット/アンソニー・D・ウィリアムズ
ウィキペディアの元ともなった、ウィキウィキはもとより、アレクサインデックス、MITのファブ・ラボ、ブロゴスフィア、ピアプロダクション、タギング、アイデアゴラ、LAMPスタック、プロシューマ、マッシュアップ、ピープルファインダーなどの真の意味を解説しつつ、その根幹に知識、経済活動そのものがピアプロダクションに移行しているという新しい世界観を提示しています。
また、最近、WEBは一種の写本文化を産み出しているのではないかと考え始めていて、比較の意味で、
★「図書館の興亡―古代アレクサンドリアから現代まで」マシュー バトルズ
も読んでみました。読んでるうちに、今のWEBと作り方が同じジャンとか、思えます。
小説では、SF作家のチャールズ・ストロスが凄かったなというのが感想です。
★「シンギュラリティ・スカイ」チャールズ・ストロス
は、魔法のような量子理論的科学が世界を変えていく過程が描かれていて、衝撃的な本でした。
まだ読んでませんが、12月に発売されたばかりの、「残虐行為記録保管所」もヒューゴー賞受賞ということで、読むのが楽しみです。
音楽SFの名作「デュオ」の飛浩隆も、
★「ラギッド・ガール―廃園の天使」
で、ちょっと恐ろしいことを始めたようです。
最後に、
★「ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く」リサ・ランドール
は、ちょうど今読んでます。
ひも理論と、M理論を、それに標準モデルを結ぶ、新しい考え方「ブレーン」についての、初の数式なしの解説書です。
明けましておめでとうございます
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