2011年3月31日木曜日

「火星ダーク・バラード」上田 早夕里

火星ダーク・バラード (ハルキ文庫)小松左京賞受賞作なので、人類の行く末を描いた作品と読み始めたのですが、最後のやはり人間は変わらない的終わり方にがっかりしました。内容的には、キャリー的、女の子とハードボイルド刑事が出会ったら。しかし、急に女の子が主人公を好きになったり、動機付けがよくわからないままの甘い部分もありますが、半分過ぎた頃からテンポが良くなって、文体もしまってきます。しかし、これをSFにする意味あるのかやはり疑問です。★★★

2011年3月30日水曜日

帝国経済は面白かったのですが「星界の紋章ⅠⅡⅢ」森岡 浩之

星界の紋章〈1〉帝国の王女 (ハヤカワ文庫JA)経済的、貿易商人が作った銀河帝国。この仕組は面白くて、Ⅰ巻は期待しながら読んだのですが、その後のドタバタにはついていけませんでした。ぼくには、あわないようです。★★

これは傑作です「シリンダー世界111 」アダム=トロイ・カストロ

シリンダー世界111 (ハヤカワ文庫SF)シリンダー型ステーション111、直径千Km、長さ十万Km。太陽もない深宇宙に浮かぶ、異常な世界。こういった設定が凝りに凝っていると、難しいSF、読むのがシンドい、世界設定についていけないととても読めない、しかし、この作品は違います。読みやすい、分かりやすい、しかも、その世界設置がミステリーに直結しています。よく出来ていて、読んで楽しく、SFを読む満足感、十分という稀な作品です。この厚みが薄くなるのが寂しくなるように読むことが楽しい、作品。しかも、設定がどこまでもSF、それが人間であることを要求する、できのよさ、SFを読んでてよかったと思える本です。★★★★

2011年3月25日金曜日

飛び切りのエンジニアリング小説「第六大陸」小川 一水

第六大陸〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)SFのジャンルとまではいきませんが、エンジニアリング小説というカテゴリーが大好きです。意地や、友情や優しさも、それを裏付けるものがなければ、そんな時には、科学とエンジニアリングです。月に建物を建てよう、それは土木工事だ。さあ、リストを作り、テストを行い、見積もりを作ろう。登場人物たちは、ちょっと魅力に欠けますが、それを補って余りあるエンジニアリングがここにはあります。ぼくの嫌いは、プロジェクトX風、盛り上げもなし。安心して愉しめます。★★★★

2011年3月24日木曜日

これぞSF「老ヴォールの惑星」小川 一水

老ヴォールの惑星 (次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809))海だけの惑星に、位置を特定できなまま、延々と漂う軍人。設定がいかにもSF、その環境の中で人間がどうなっていくのか。SFしかできないことを見せてくれる、短編4作が入ってます。★★★★

2011年3月19日土曜日

「ゾーイの物語 老人と宇宙4」ジョン・スコルジー

ゾーイの物語 老人と宇宙4 (ハヤカワ文庫SF)第3話を、十代の少女の視線で描き直した、成長もの教養小説のはずですが、この女の子が最初から完成されてます。1,2巻に出てきた主人公達と同じく、完璧な兵士&理想的な人間像。リーダーの素質ではなく、リーダーそのもの。これでは、と思っていましたが、最後に盛り上がります。しかし、これは、自意識を持たなかった、オービン族、ヒッコリーとディッコリーが成長したからです。初の異星人、教養小説といったところでしょうか。主人公を彼らにすればよかったのに。★★★

2011年3月17日木曜日

「星ぼしの荒野から」ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

星ぼしの荒野から (ハヤカワ文庫SF)ティプトリーの中では、意外性とブラックユーモアにもっとも溢れた短篇集です。ティプトリーは、読みにくいと思っている方、この本からどうぞ。★★★★

2011年3月15日火曜日

「故郷から10000光年」ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

故郷から10000光年 (ハヤカワ文庫SF)ティプトリーのなかでは、最もわかりやすく、読みやすい。しかも、異星の空の下、人間について考えるようなシチュエーションさへ与えてくれます。今日のような日には、これほど再読に向いた本もないのでした。★★★★

「究極のSF 13の解答」E・L・ファーマン/編

究極のSF―13の解答 (創元SF文庫)初版1980年という古い短篇集ですが、それだけに作者が凄いです。ジェイムズ,ジュニア ティプトリー,フレデリック ポール,ポール アンダースン,キット リード,ハーラン エリスン,E.L. ファーマン。12のテーマを幅広く扱ってます。すでに内容は非常に実験的、SF好きなら一読をお勧めします。★★★

2011年3月14日月曜日

書きおろしSF短篇集「NOVA3」大森 望/責任編集

NOVA 3---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)とり・みき、浅暮三文、東浩紀、円城塔、小川一水、瀬名秀明、谷甲州、長谷敏司、森岡浩之。小川一水、谷甲州がなかなかいいです。SFとして、どれも一定以上の短篇集に仕上がってます。実験的すぎず、読んで面白いのもいいところ。★★★

2011年3月12日土曜日

やはりこれは別格でした「キマイラ9 玄象変」夢枕 獏

キマイラ9 玄象変 (ソノラマノベルス)10年以上とか思ってたら、正確には8年ぶりの新作だそうです。「新・魔獣狩り」の力のない文体に悲しさを覚えていただけに、この物語が昔のままに元気な姿を見せてくれて嬉しかったです。しかし、さすがに粗筋は忘れていて、その補正がいきなり続くのは、やはりしかたがないのか。★★★

2011年3月10日木曜日

学会的矛盾「悩ましい翻訳語―科学用語の由来と誤訳」垂水 雄二

悩ましい翻訳語―科学用語の由来と誤訳今回は、バランスよく、しかも、ドーキンスの翻訳の話もあって、門外漢が読んでも面白いテーマが揃ってます。生物の命名が、生物学と他の学問体型で違っていたり、時代性に囚われていたり、いろいろと面白い矛盾を読むのも楽しいです。★★★

2011年3月8日火曜日

老齢、身につまされる「修道士カドフェルの出現―修道士カドフェルシリーズ(21)」エリス ピーターズ

修道士カドフェルの出現—修道士カドフェル・シリーズ〈21〉    光文社文庫最終巻です。十字軍から帰ったカドフェルが、修道士になるきっかけが語られます。いつまでも、旅を続けられないのか、客死を願うぼくには深刻な問題で、身につまされました。★★★

2011年3月7日月曜日

これは傑作「最後の星戦」ジョン・スコルジー

最後の星戦 老人と宇宙3 (ハヤカワ文庫SF)

老人と宇宙第3巻です。1,2巻と比べると、急に出来が良くなって、面白くなります。今度は、新しい星への移民団。率いるは、1巻に登場したジョン・ペリーと、ジェーン。それに、2巻からは養女ゾーイ。複雑な星間政治の中で、移民団は戦争に巻き込まれます。2転3転、ペリーが大活躍。★★★★



2011年3月2日水曜日

今度は人間とは何かですが回答はなし「遠すぎた星」ジョン・スコルジー

遠すぎた星 老人と宇宙2 (ハヤカワ文庫SF)ゴースト部隊は、遺伝子を死者からもらっていた。記憶がない彼らは、人工知能の支援であっという間に大人になる。裏切り者の知識を蘇らすため、記憶をメモリーから入れられたゴースト部隊の兵士が主人公です。彼は裏切り者になるのか、果たして人間なのか。入れられた記憶が復活するにつれ、娘の記憶が蘇り最後は、異星で本人と主人公の対決。テーマの掘り下げではなく、エンターティメントに抑え回答はでないまま。できはいいのですが、技術的な解説が延々と続く部分はちょっとバランス悪いです。★★★

2011年3月1日火曜日

「老人と宇宙(そら) 」ジョン・スコルジー

老人と宇宙(そら) (ハヤカワ文庫SF)軽く読めるスペースオペラ。異星人と闘う軍人たちの正義と友情の物語。悩むより、友を助けろです。単純すぎて笑えますが、読み物としてのできは十分です。★★★