2013年1月1日火曜日

明けましておめでとうございます。

今年も、昨年読んだほんの中からお薦めのものを集めました。
 本年もよろしくお願いします。

 「職業は武装解除」瀬谷ルミ子 NGO、国連機関、そこで行われていることの関係がこれほどよくわかる本も珍しいです。武装解除した後も、兵士は生活があり、彼の周りにも武器を持たない、もっと悲惨な人々がいる。その中で、武器を持っていたことで、それを提供することで優遇されることの理不尽。そして、それを通じてしか変えられない世界。薄く、すぐに読める本ですが、大変な本でした。 DDR(兵士の武装解除Disarmament・動員解除Demobilization・社会復帰Reintegration)というシステムを忘れず、ニュースを見たいと思います。★★★★ 

リアルなワイヤード「越境する脳 ブレイン・マシン・インターフェースの最前線」ミゲル・ニコレリス アカゲザルの脳に針を刺して、皮質ニューロンの信号をロボットアームの制御信号に変換した方です。ちなみに、ATRのロボットの接続先が、このサルたち。ニューロンは、集団で信号を形成し、しかも ニューロンマルチタスキングで、1つの仕事をしながら、別の仕事もやっている。こうした、BMIの次は、複数の脳をつないで、直接信号のやり取りも行なっています。待望の翻訳書です。ただし、原文が詩心満載で読みにくいです。1章は、悪夢。4章ぐらいまで我慢すると、読みやすくなります。マウスの脳に電気信号を流して、迷路を抜けさせる話が続きます。種痘や手術に対する恐怖が、19世紀的な恐怖とすれば、脳に針を刺すのうんぬんは、21世紀的な恐怖なのかもしれません。ぼくは、はやく、脳に針を刺してみたいです。ちなみに、人間の場合、電極帽子を被る方式ですが、分解能が足りないようです。しかし、著者はもっと先を考えているようで、この本その辺りの、ハリウッド的な脳接続を超える場所を、最後に示しています。著者紹介に、 ローマ法王庁生命アカデミー(Pontifical Academy for Life)の会員でもあるとの表記も。さすが、マリア様の国ブラジル。ブラジルが、BMIで先進国になる日も近い気がします。★★★★★ 

貧困と闘うベンチャーキャピタル「アキュメン・ファンド」CEOの渾身の力作「ブルー・セーター――引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語」ジャクリーン ノヴォグラッツ 帯に「貧困と闘うベンチャーキャピタル「アキュメン・ファンド」CEOの渾身の力作」と書かれていて、これ素晴らしい要約でした。タンザニアで売り出される、マラリア対策の蚊帳。アフリカ各地で売りだされている、灌漑ポンプ。低価格の灌漑システム。最近、デザインという言葉で語られる、新しい商品たちに資金を提供する組織の成り立ちが書かれています。彼女自身の物語でもあり、始めてアフリカへ到着した際の部分は、真の冒険です。 「価値観や原則をめぐって話しあうきっかけとして、文学や偉大な哲学的、政治的作品に触れることが役に立つのを学んだ」など、この組織が成長するためのカリキュラムも紹介され、知恵が詰まった本です。世界という言葉が、急に身近に感じられる、珍しいほどの良書です、この本を読めたことに感謝。★★★★★ 

ほんとに世界を変えている「世界一大きな問題のシンプルな解き方――私が貧困解決の現場で学んだこと」ポール ポラック 世界の90%の人が、1日1ドルで生活している。5エーカー(20235㎡)の土地で、最貧国に暮らす人たち向けのビジネス。実践的なビジネス戦略で、こうした人たちを支援できる、世界を変えるための方法が書かれている本です。2度読み返し、3回読みました。日本でもすぐにできることがあると教えてくれます。デザイナー、プランナー、企業オーナーの方々は是非読んでみてください。★★★★★ 

「遺伝子組み換え企業の脅威 モンサント・ファイル」エコロジスト誌編集部 Amazonにあった内容紹介を、まずはそのまま。「バイオテクノロジーの分野で世界最大の有力企業であるモンサント。同社はラウンドアップ・レディ大豆に象徴される遺伝子組み換え除草剤耐性作物など遺伝子組み換え技術をてこに世界の農業・食糧を支配しようとしている。 しかし、遺伝子組み換え食品の危険性が明らかになるとともに、遺伝子組み換え企業の戦略が、人類の健康と農業の未来、自然と環境にとって大きな脅威となってきている。 本書は、モンサントの妨害にあいながらも出版された『モンサント・ファイル』の全訳である。 増補版では、遺伝子組み換え作物問題の最新の動向を加えた。」 内容の半分でも本当なら、とんでもない企業です。まさに、利益のために世界を壊そうとしています。巻頭は、英国のチャールズ皇太子。巻末の参考資料を少しずつ読んでみることにします。遺伝子組換え植物がどうこうというより、それで何を作るかの問題で、とんでもないものを作っているようです。★★★★★ 

ヒューゴー賞/世界幻想文学大賞/ローカス賞/クラーク賞/英国SF協会賞受賞!「都市と都市」チャイナ・ミエヴィル ヒューゴー賞/世界幻想文学大賞/ローカス賞/クラーク賞/英国SF協会賞受賞!という、とんでもない作品ですが、確かに受賞するはずです。難解な「ペルディード・ストリート・ステーション」の作者、チャイナ・ミエヴィルが描くのはいつも都市。テーマが、都市そのものを描くこと。後書きに著者の言葉があり、「ミステリは都市とダイレクトに結びついている」。そして、その答えがこの小説です。ハードボイルドの警察もの、しかも、現代ヨーロッパが舞台。そこに、見事に架空の都市を作り出し、同じ都市の中に、2つの都市が共存するという、面倒な設定を描き、それが成り立ってしまうという離れ業。ミステリとしても、十分案読み応えがある、SF小説です。★★★★★ 

「南極点のピアピア動画」野尻 抱介 ソフトウエアは限りなく、ハードウエアに近づき、ハードウエアも限りなくソフトウエアに近づいている、それを支えるSocと、オープンハードウエア。次にオープンになるのは、ハードウエアです。そして、そこに乗っかるのが、情報という怪物。この小説に登場する、初音ミクっぽいキャラは、まさしくこうした時代の情報そのものです。オープンハードウエアにより、情報が解放され、世界はこう変わることもできるのでした。やっぱりSFは素晴らしいです。★★★★★

 Macに入った欧文フォントが知りたければ「フォントのふしぎブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」小林章 小林章を、最初に読んだのは、飛行機か新幹線の社内誌でした。トラヤヌス帝の碑文の話から、欧文書体の話が書いてあって、それ以来気になっていたら、銀座アップルでの講演、しかし、忙しくて行けなくて、そして、この本が出版されようやくたっぷり読めるようになりました。パチパチ。著者は、ドイツ在住のライノタイプ社のフォントデザイナーです。ライノタイプの印刷機、昔、ニューヨークで見たなとか、ライノタイプ社自体でもドキドキしますが、そこのデザイナーとは。とにかく、Macにも入っている欧文書体、フツラ(昔は、フーツラっていってました)や、ツァプフィーノなどの書体の紹介、街角に使われた書体の写真、ハイフンとダーシの使い方の違いまでたっぷりフォントに使って、読んだ後世界が広くなります。装丁は、祖父江慎。中身もすべてカラー写真で、2000円。すごい本です。★★★★★ 

キッチンラボでオープンソース「バイオパンク DIY科学者たちのDNAハック!」マーカス・ウォールセン 手作り、中古の機器をキッチンに置いてバイオの研究。遺伝子はオープンソースにするべきだ。遺伝子ハック。特定の機能を果たす遺伝子がわかれば、WEBでプライマーを発注、サーマルサイクラーで増幅して、読み取り機でチェック。新しい世界が来てます。★★★★★ 

新しい仕組み、新しいシステムの創造「ニコニコ学会βを研究してみた」江渡浩一郎 会場はもの凄く混んでいそうだし、ニコニコ動画もプレミアムじゃないので、たぶん見れないだろうし、まぁいいかなどと思ってました。しかし、この本を読んで反省しました。新しいシステムが立ち上がってます。とくに、巻頭言は必読です。いや、アンテナが曇ってきたのか、これをリアルタイムで見なかったのは大失敗でした。★★★★★ 

失った東京の姿と言葉、久々の5つ星本です「辞書を育てて」水谷 静夫 広辞苑ではなくて、3000円程度で買える岩波国語辞典。古い言葉、亡くした言葉がみつかる、国語辞典の定番です。この辞書の編者の随筆ですから、失った言葉が次々紹介されます。江戸の香りの言葉や生活、自分の周りからどれだけのものが50年でなくなるのか、薄い本なのに読むのに10日ほどもかかりました。力作。★★★★★ 

知識がなければ測れない「放射線測定のウソ」丸子かおり 放射線測定の方法がコンパクトにまとまっています。ガンマ線のみの測定でなぜ大丈夫なのか。できること、できないこと。これから、数十年放射線と付き合うためには、必須の知識がまとめてあります。日本人なら絶対読みたい本です。★★★★★

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