2010年5月30日日曜日

中世哲学を再勉強「天使はなぜ堕落するのか―中世哲学の興亡」 八木 雄

天使はなぜ堕落するのか―中世哲学の興亡アウグスティヌスや、トマス・アクィナス、イスラム神学者ガザーリーの本を読んだのは、高校生の頃でした。トマス・アクィナスは、だらだらと続く冗長な文章、何度も同じことが言い換えられて続く独特の著述スタイルに、バカバカしさしか感じませんでした。反対に、ガザーリーは、綿密な考証、考え尽くした思考に驚き、これで神を信じられるのと思ったら、やはり晩年は思索を辞めて敬遠な信徒に戻ったという記述を見つけてなるほどと思ったものです。トマス・アクィナスの、アリストテレスの有名な命題「それ自体で存在するもの」、実態への捉え方は、甘いとしか思っていませんでした。この考えが間違っていたことにようやく気づきました。トマス・アクィナス、そしてヨハネス・ドゥンス・スコトゥスを通じて中世神学哲学全体の再把握にこれほど適した本はないと思います。そして、オッカムのみつけた近代というものを、考え直すために中世哲学が役に立つという、当たり前のことをみせてくれました。この厚みでも、薄すぎるほど中身が詰まってます。★★★★

NHK技研公開行ってきました

NHK技研 NHK技研公開行ってきました。成城学園前から、直行バスが出てました。普通に座れる、今日は、会場も空いてました。展示はますます、丁寧になり、順路に沿ってスムーズに見れます。スーパーハイビジョンもますます迫力。写真のスピーカーは、ポリ系の樹脂膜の両面に帯電素材を貼った3面構造のフィルムを2枚張り合わせてあります。コンデンサのように帯電して、振動。形もいろいろありましたが、音には関係なく、サイズが帯電量になるので1番のファクター。2年前のものも経年変化はなく、音質もかわってないとのこと。なにより軽い。雨の前に帰宅。


2010年5月29日土曜日

初心者のための海図教室 吉野 秀男

初心者のための海図教室海図に航海計画を書き込み、マリーナに申請しよう。では、書き方はというときの本です。練習用海図もついていて、初心者でもわかるお手軽さ。必要なところがコンパクトにまとまっています。海図を始めて見るときの入門にはベスト。★★★

近代科学の写真集「Deep Inside」西澤 丞

Deep Inside三鷹海洋研究所の波プール、高エネルギー研究所の高圧碍子、素粒子ミュオン実験装置、これがカッコいいんです。そんな理化学系写真家(ぼくが勝手に呼んでいるだけですが)、西澤 丞写真集です。新作「Build the Future」を立ち読みして、神保町を数件歩いて見つけました。60年代科学の夢が詰まってます。★★★★

2010年5月28日金曜日

別役実?「なつかしく謎めいて」 アーシュラ・K. ル=グウィン

なつかしく謎めいて (Modern & classic)別役実の本を読んでいるような気がしてしかたがありません。「イーハトーボゆき軽便鉄道」の続編を読んでいるみたい。グウィンなので、皮肉を聞かせるのではなく、文化的な理解の果てを求めたいのですが。ないものねだりですね。異次元の異文化をグウィンが次々と想像していくのですから、面白くないはずがありません。★★★

2010年5月25日火曜日

ボルヘスの数学「数学は最善世界の夢を見るか?――最小作用の原理から最適化理論へ」イーヴァル・エクランド

数学は最善世界の夢を見るか?――最小作用の原理から最適化理論へガリレオの振り子、ライプニッツのモナド、世界は最小、最短、最適な世界として構築されているのか。それは、神の意志なのか、別の原理なのか。続く、オイラー、ポアンカレ、ラグランジェと最適な世界の法則探索が続きます。しかし、それも前半第4章まで。残り半分は、善や、社会政治概念などの人間世界の話になってしまうのが本当に残念です。しかし、4章までは、まさにボルヘスが望んだ数学そのもの。ボルヘスへの言及も出てきて、著者がバベルの図書館を読んでいることもわかります。モーベルテュイのことも知らなかったので、大きな収穫でした。後半はなかったことにして、ボルヘスの夢見た数学の本としてかなり楽しめました。★★★

2010年5月24日月曜日

現実のエクソシスト「バチカン・エクソシスト」 トレイシー ウイルキンソン

バチカン・エクソシスト (文春文庫)イタリアには、300人を超えるエクソシストがいて、しかもそれは、ここ10年で増えたから。毎週、歯医者に行くように悪魔祓いを受けている人がいる。そんな現実のエクソシストを取材したルポルタージュです。バチカンは、悪魔の存在を肯定、悪魔祓いも公式に認めているが、マスコミに騒がれないようにしている。教会内部でも、悪魔祓いは肯定、否定、両論ある。統合失調症なのか、悪魔なのか、悪魔は人格を持っているのか、そんなことには答えてくれませんが、バチカンの実際、イタリアの悪魔崇拝ブームを知るには面白い本です。★★★

2010年5月23日日曜日

新時代を感じました。Make: Tokyo Meeting 05

Make06Make初音ミクステラコイル前回までと急にレベルが違ってます。濃い、できがいいものが多い、見せ方も考えてる。メイドさんが増えたのは、お愛嬌ですが、作っているものも、売っているものも、きちんと市販レベルでも通用するものが増えてます。
mbed NXP LPC1768とか、開発環境をクラウドに置いてあります。
キャリブレーション済のシリアル・サーボなどすぐにも仕事に使いたいぐらい。ステラコイルの演奏も聴いてきました。「とある科学のレールガン」というアニメの曲だそうです。小さい子驚いて泣いてました。新しい時代が確実に来ています。
明日もやってます。



2010年5月21日金曜日

ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判 1、2、3巻 町山 智浩

ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判 (映画秘宝COLLECTION (20))とにかく悪口三昧の映画批評。しかし、自分でお金出して見に行った映画がボロボロだったあとに、この本読むとやっぱりと思えて、少しさっぱりします。自分でお金を出して映画を観る人のための映画批評は、王道です。実際、ぼろぼろに言われている映画のヌルさは呆れるほどだし。★★★

2010年5月20日木曜日

先生、シマリスがヘビの頭をかじっています! 鳥取環境大学の森の人間動物行動学 小林 朋道

先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!鳥取環境大学、動物行動学の教授が描く動物エッセイなのですが、著者のとぼけた性格もあってか、読むと笑えます。動物の行動に興味が湧いてきます。自然の見方が変わります。蛇や、イモリや、魚も驚くほど興味深く思えてきます。死んだ蛇の匂いをリスが体に擦り付けるなど、観察という行為がどれほどの力を持つか思い知ります。名著です。★★★★

2010年5月19日水曜日

アードマン連結体 ナンシー・クレス

アードマン連結体 (ハヤカワ文庫SF)ヒューゴー賞受賞作、ネビュラ賞作などを揃えた中編集。SF的な設定や世界が、人間を描き出してます。80年代のいいところを復活したような味わい。安心して読めます。★★★★

2010年5月15日土曜日

ん 日本語最後の謎に挑む 山口 謠司

ん―日本語最後の謎に挑む (新潮新書)平安時代初期には、「ん」というカナ表記はまだなかった。発音としても、認識されたのはもっとあと。しかも、中国から空海などが持って帰った経典の音読の記号として、最初は表された。中でも、これにはまいりました。
「日本語は「純粋なる清」を目的とする和歌を中核として、その外郭に外国語や擬音語、擬態語によって成り立っているようにも思われる」なるほど。濁りは汚れです。★★★★

2010年5月14日金曜日

アマゾン文明の研究―古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのか 実松 克義

アマゾン文明の研究―古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのかインカや、マヤが有名な南米ですが、アマゾン川流域に巨大な文明が存在していたといいう研究書です。文明の名前は、モホス文明。木と、土だけで作られた文明なので、今まで、巨大石文明の影で見過ごされていたそうです。しかし、書いてあるのは、治水や、円形の土盛、畑の作り方など、技術的なことばかりで、便利な技術が伝搬したのとどこが違うのか、この本でははっきりしませんでした。続報待ちといったところです。★★★

2010年5月13日木曜日

「食糧危機」をあおってはいけない 川島 博之

「食糧危機」をあおってはいけない (Bunshun Paperbacks)常識が吹っ飛びました。食糧危機はこない。では、なにゆえ。


◆BRICsの成長で、穀物が足りなくなる------牛は増えない。豚や鶏だけ。大豆が飼料だが、海外では油をとるだけ。増えた大豆は、ブラジルだけで供給可能。インドは、ベジタリアン化。イスラム圏は、鶏。肉は十分に供給可能。穀物は大丈夫。


◆買い負けで魚がたべれなくなる-------寿司はただのブーム。魚を食べる習慣をもつ民族は少ない。中国は川魚。現在でも、買い負けは、それだけの値段に見合わないので、買わないだけ。買えないわけではない。


◆人口増加-------中国でさへ、すでに出生率は下がっている。人口増加は止まった。


◆食物生産は限界、土地がない、水不足-------効率のいい農業を行っているのは、アメリカ、ヨーロッパのみ。まだまだ、世界では効率化が可能。世界中で価格維持のため、減反している。土地はまだまだある。灌漑農業は、不利な土地だけ。世界では天水農業がほとんど。地下水がなくなっても、実際は大丈夫。アラル海は、綿を栽培したから。オガララ帯水は、不利な土地で、過疎化。五大湖の南の本当の穀物地帯は、水不足もない。
肥料不足もなし。


◆バイオ燃料で穀物不足-------アメリカのバイオ燃料は実際には、とうもろこし農家への補助金政策。ブラジルではとうもろこしの数倍増産が可能。


ということで、常識が変わります。すごい★★★★★

2010年5月11日火曜日

BUFFALOのBluetooth壊れる

Bluetoo BUFFALOのBluetooth。ケース部分がとれてしまい、接着すれば大丈夫かと思ったのですが、マイクから雑音が入るようになりました。接着面が小さすぎ、構造的欠陥では。

2010年5月10日月曜日

作ってわかるLED照明入門 臼田昭司

作ってわかるLED照明入門白熱球がなくなってしまうということで、仕事でなく、日常生活のために読みました。RGB3つのLEDが入った、白色パワーLEDの特色が細かく解説してあります。LED用の回路には、電圧を一定にしたものと、電流を一定にしたものがあり、今度からは、電球だけでなく回路設計も必要な知識になります。快適な照明空間を作るのは大変です。★★★

2010年5月9日日曜日

足首捻挫なのに、散歩。

御茶ノ水橋 足の捻挫、ようやく腫れが+から-へ。足を引きずりながら散歩。聖橋ではなく、御茶ノ水橋下を走る船に、仁王立ちのおじさん。気持ちよさそうだ。
パトレイバーの主人公みたい。拡大できます。

神田淡路町の騒音・振動、どうせなら、Twitterして欲しい。

騒音 41階建てのビルがたつという、神田淡路町の再開発地域。工事現場の壁に騒音、振動をデジタル表示。どうせなら、Twitterして欲しい。

コナン君を見上げる

コナン みんなが見上げているので、久しぶりに空を見たら、飛行船でした。

2010年5月8日土曜日

お騒がせなクリスマス ジャネット イヴァノヴィッチ

お騒がせなクリスマス (扶桑社ミステリー)ステファニー・プラム番外編。クリスマススペシャルです。転送!できる男登場。ちょっと不思議テイストで、サンタをプラムが捕まえようと頑張ります。爆笑、よくできてます。★★★

2010年5月7日金曜日

ラウィーニア アーシュラ・K・ル=グウィン

ラウィーニアウェルギリウスの叙事詩「アエネーイス」を、アエネーイスの妻の立場から、翻訳した(グイン曰く)小説です。70歳を超えてラテン語を勉強し、アエネーイスの音楽性を翻訳できないために、小説にしたという作品。それを、日本語で読もうというのですから、無茶な話ですが、翻訳はかなりのレベル。ゆっくりと、読む本です。岩波版の「アエネーイス」の荒々しさからすると、近代人過ぎるアエネーイスです。ぼくには、シェークスピアの悩む王族さへも、過去の物語として読んでしまうしかなく、アエネーイスが物足りない人物像になってしまいました。ゲドの晩年を思わせる人物ばかりで、立派すぎです。★★★

2010年5月6日木曜日

ブレードランナーの未来世紀 映画の見方がわかる本 町山 智浩

〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀 (映画秘宝コレクション)80年代カルトな映画監督たちが撮った、カルト映画の紹介本。「映画秘宝」に連載された「イエスタディ・ワンスモア」の訂正加筆版です。クローネンバーグ、ジョー・ダンテ、キャメロン、テリー・ギレアム、オリバァー・ストーン、デヴィット・リンチ、ポール・ヴァーホーヴェン、リドリー・スコットなど、オライオン系の作家っぽい監督の出世作を紹介しています。20年以上前の映画へのオマージュなので、どれも美しく、バカバカしい理想的な姿が語られます。★★★

2010年5月1日土曜日

葬式は、要らない 島田裕巳

葬式は、要らない (幻冬舎新書)宗教学者が書いた、葬式不要論。さすがに、勉強になります。奈良の古寺は、研究機関であり、埋葬地を持たず、僧侶が死んでも他の寺で葬儀をあげ、埋葬してもらう。初めて知りました。葬式不要の世の中を堂々と唄った、第1作として、貴重な本になるかもしれません。★★★★

オペレーション・アーク 3 デイヴィッド・ウェーバー

オペレーション・アーク〈3〉―セーフホールド戦史 (ハヤカワ文庫SF)まるで解説書のようだった1巻から、少しはまともになってきました。今回は、海戦です。ガレー対、ガレオン。旗艦の名前が、ドレッドノート。内容はほぼ予想通りの展開、予想どおりの終わり方。SFっぽい設定が必要とは思えません。3巻で終りと思ったら、延々と続刊がでるようです。さすがに、これ以上付き合う気はないのですが、これほど実際に生きる人間の苦悩がなくなり、類型化された小説が登場することをどう考えたらいいのかわかりません。ゲーム小説もしかり、新しい読み方が存在することは認めなくては。★★